【紹介していいかも!特別号・TOIC NAGOYA先生紹介リレー】#03 渡邉 雅子先生
#03『“表現が思考を作る?”渡邉先生とこれからの【表現】について語ってみた!』

TOIC NAGOYA公式HPをご覧の皆様、こんにちは!
TOIC NAGOYA運営担当です。
TOIC NAGOYAでは、TOIC NAGOYAから見た名古屋大学内の研究者の研究内容と魅力を最大限に発信していく取り組みとして『先生同士のすてきな繋がり』にフォーカスし、先生によって先生をご紹介いただく、バトン形式のユニークな新企画、
「紹介していいかも!特別号・TOIC NAGOYA先生紹介リレー」をスタートいたしました!
第3回は、名古屋大学大学院 教育発達科学研究科 教育科学専攻 学校情報環境学より、渡邉雅子先生にご協力いただきました!

この企画は、名古屋大学の先生から、研究やご自身の活動のルーツについてざっくばらんにお話いただいたり、
ご交流のある先生とその先生とのエピソードをご紹介していただくことで、先生のお取組みやご自身の魅力に迫り、
先生やTOICへご興味を持ってくださった皆さんへシェアしていくプロジェクトです!
先生から先生をご紹介いただくというバトン形式リレーで、TOIC NAGOYAの各種媒体(HP、SNS)から、インタビューの様子を発信します。
TOIC NAGOYA 公式SNSのフォローもぜひお願い致します!
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本プロジェクトを介して先生ご自身やお取組みに興味を持たれ、ぜひ連携させてもらいたいというような、
先生と「会ってみたい」方はぜひHPの「Contact」からのお問い合わせ、もしくはTOIC NAGOYAのコミュニケーターまでご相談ください!
それでは、本編、スタートです!
インタビューご協力:
名古屋大学大学院 教育発達科学研究科
教育科学専攻 学校情報環境学 教授 渡邉雅子先生
渡邉先生・ご活動:
私たちは日々、他者と対話し、意見を交わしながら生活しています。
しかしながら、私たちはひとりひとり多様な価値観を持っているが故に「この人の言ってること理解できない!」なんてことも時にはあるのではないでしょうか。
実はこの【考え方】や【価値観】は国や文化によっても非常に大きく異なります。
渡邉先生は、アメリカ留学時にご自身のエッセイが適正に評価されないという【評価の壁】を体験したことを研究の契機とし、【論理構造】の文化差を探る道へ歩みを始められました。
その後の研究で、日本・アメリカ・フランス・イランの作文教育を比較し、各国が【論理的思考】をどのように育むかを明らかにしています。
その研究成果は、【論理的思考とは何か】(岩波新書、2024)をはじめとした書籍として出版され大変多くの反響を呼んでいます。
インタビュアー:
TOIC NAGOYA 学生コミュニケーター 細居さん
——現在のテーマで研究をされることになったきっかけ
細居さん:
先生こんにちは!今日はお時間をいただいてありがとうございます。
TOIC NAGOYA、学生コミュニケーターの細居です。よろしくお願いします!
早速ですが、先生はどうして研究者になろうと思ったんですか?
渡邉先生:
実は、アメリカに行ったきっかけは、夫のニューヨーク赴任に帯同したことなんです。
そこで当時コロンビア大学で博士論文を書いていた知り合いに連れられてコロンビア大学を見学し、「授業を取ってみよう」と気軽な気持ちで始めたのですが、そこでその後ずっと続けることになる研究テーマに出会ってしまいました。
細居さん:
特に現在のテーマをやろうと思ったきっかけは何でしたか?
渡邉先生:
きっかけは実は、大学で体験した「見えない文化衝突」でした。
細居さん:
え?どういうことですか??
渡邉先生:
最初に提出したエッセイがungradable(採点不可)と書かれて突き返されて…。
その後何度書き直しても「何を言いたいのか分からない」というコメントが繰り返されるばかりで本当に途方にくれました。その時に、アメリカではエッセイという小論文の型があることを知り、そのエッセイの構造に衝撃を受けました。
細居さん:
「お決まりの形」があったってことですか??
渡邉先生:
そうなんです。
それで、その型の通りに書き直したら評価が急激に上がりました。そして何より、先生とコミュニケーションがとれるようになったんです。
細居さん:
「表現の仕方」を変えただけでコミュニケーションの質が変わるとは…!面白いですね!
渡邉先生:
そう。この体験から、表現の型がコミュニケーションのカギであると思いました。
細居さん:
ご自身の体験がきっかけだったのですね!
渡邉先生の著書「納得の構造」はご自身の博士論文が基になっているとのことですが、最初はやはり日米の表現について比較したのですね。
渡邉先生:
日米の価値観の違いを作文の型とその教育法をもとに検証しようとしたところ、博士論文の指導教授に「自分は文化などというものは信じない。そんなものがあるなら数字で証明してくれ」と言われまして…。
細居さん:
なんか文化と数字って直感的には結びつかないような気がしますけど、、、
渡邉先生:
そうですよね。だから、統計的に有意な差が出る実験そのものを考えるのはもちろん、他にも、実験に協力してくれる学校探しと、実験を行うための大学の倫理審査を通すことに長い時間がかかって、とても大変でした。
細居さん:
具体的にはどのような実験を行ったんですか??
渡邉先生:
日米の子どもに同じ絵をみせてどのように説明したり、理由付けするのか、作文実験で検証しました。また、この作文実験を補完するために、つまり同じ絵を見てなぜそこまでの違いが日米で出るのか、その原因を国語と歴史科目の授業観察と、日米の教育の歴史から明らかにしました。
細居さん:
本を読んだりお話しをしたりしている中で、生物の研究をしている僕にもわかりやすい内容になっているのはそのような経験があるからなのかな?と思いました。
渡邉先生:
それは、すごく嬉しいです!
この経験は長い研究生活の中で一番大変だった、辛かったといっても過言ではなくて…。けれども幾つもの壁を越えて博士論文を仕上げたことが、これまでの研究の糧にもなっています。そして、これを越えたからには、人生何も怖くないとまで思えるようになりました。
細居さん:
その後、フランスやイランとも表現を比較していくと思うのですが、どうしてその2カ国だったのですか?
渡邉先生:
フランスは博士論文を書いているときに教授に勧められましたが、その時は日米の比較で手いっぱいでした。
日本に帰国後研究所勤務をしていた時に、3カ月海外に行けるチャンスがあって、そこでもまた研究所の同僚にフランスに行くことを勧められたんです。
細居さん:
フランスに呼ばれていたんですね(笑)
渡邉先生:
そうだと思います、考え続けているとチャンスが掴めるのだなと思いましたね。
イランに関しては、その当時「国際日本文化研究センター」という研究所に所属していたのですが、そこで日本の教育を研究していたイラン人研究者が私の博士論文を読んで「共同研究がしたい」、博論をペルシャ語に翻訳したいと訪ねて来たことがきっかけでした。
細居さん:
人との縁によって比較する国の数が増えていったという事ですね。

会話が盛り上がっていく2人。
——AI時代における【書くこと】について
細居さん:
これからはAIが社会に浸透していくと思いますが、AIが文章を生成できるときに、「人間が書くこと」は必要だと思いますか?
渡邉先生:
必要だと思います、特に教育の場面で。
書かなくなると、自分で物が考えられなくなる。
まずは自国の表現について、読み書きを通じて慣れていく事が大切だと思います。
細居さん:
まず表現の礎のようなものを学ぶ必要があるということですか?
渡邉先生:
そうですね。日本ではまずしっかり感想文の形式に慣れることが重要です。
細居さん:
感想文も文章表現の型なんですか??
渡邉先生:
そうですよ!日本ではあまり型として教えられないかもしれませんが、「感想文」は日本で生まれた日本独自の「表現(叙述)の型」です。
細居さん:
「感想文」を通じて、日本人の思考法や文章表現、感情の表し方といった伝統的なものを学ぶことが重要なんですね。
渡邉先生:
日本人が論理的思考が出来ないのは感想文のせいだなどと悪者扱いされてきましたが、実は綴方の伝統を引き継ぐ感想文が学校で書き続けられることによって、明治の近代化や敗戦をくぐり抜けて、日本の伝統的な自然観や価値観が保持されてきました。
細居さん:
感想文を引き継ぐことで世代を超えて価値観が受け継がれてきたのですね。
渡邉先生:
そう、そのようなしっかりとした土台を持った上で、その次に異文化の表現、本の中では、「経済(アメリカ)」「政治(フランス)」「法技術(イラン)」「社会(日本)」4つに類型化しましたが、それらの異なる目的と価値観を持った表現形式を知ること、そして、場面と相手、目的に応じて使いこなしていくことが大切だと思います。型の背後には、それぞれの国の価値観があり、どの型を選ぶかは、実はどの価値観を選ぶかということなんですね。
細居さん:
確かに!自分たちの「考え方」をもとに他国の表現やその意図に触れられたら、異文化を理解したり、日本の特徴についてより深く知ることができそうですね。では、AIに文章を書かせる事についてはどう思いますか?
渡邉先生:
AIでも感想文やエッセイなど「表現の型」を変えて表現をする事は可能です。この時、どのような目的で書くのか、書かせる側の人間が主体的に目的をハッキリさせる必要があります。だから、基本的な様式を学ぶ事はAIに文章を書かせる際にも非常に重要だと思いますね。
——日本の強み
細居さん:
他の国と比較して、日本の「考え方」の特徴ってどの様なものですか?
渡邉先生:
良い質問ですね!
他人の価値観や考え方を感じながら、そして共感しながら調和的に行動することには非常に高い認知力が必要なんですけど、日本人は「感想文」の訓練によって、それが身についています。
常に他者を配慮し、他者の意を汲んで自らの行動を決定する訓練を学校作文を通じて行っている日本は世界に比べて利他的な国だと思います。
細居さん:
そうなんですね。
正直、僕は普段「利他的だなー」って思うことはあまりないんですよね(笑)
渡邉先生:
もしかしたら、日本の社会では利他的な行動や感じ方が当たり前になっているから、その有難さが逆に分かり難くなっているのかもしれませんね。
例えば災害時の行動とか…。利他的な行動って意外と日常に溢れているものですよ。
細居さん:
どうすれば、その利他的な行動に気づける様になりますか?
渡邉先生:
私は研究上そういう事を意識する様になったけれど、学生だったら…例えば外国に行って、異文化のカルチャーショックを体験すると、その利他性がよく分かる様になるかもしれませんね。

渡邉先生に聞きたい事がどんどん出てくる細居さん。
——これからの活動
細居さん:
これからやりたい事は何かありますでしょうか?
渡邉先生:
文化研究についての本を出したいですね!
細居さん:
今までのような論理的思考や表現についての本ですか?
渡邉先生:
それもそうですけど、高校生や大学生のような、これから研究する人にとって「指針」となる様な本が出せたらな〜って思っています。
細居さん:
研究指南書みたいな?
渡邉先生:
そうですね。
今まで自分が行ってきた研究方法や理論の使い方を研究書としてかっちりとした形式を保ちつつ、自伝的な要素も加えたものが書きたいです。
細居さん:
例えば、、「文化を数字でとらえるには」みたいな感じですか??
渡邉先生:
そうそう、もっと具体的に言うと、、
どのように「見えない」文化や思考法を可視化させるのか、文化や思考法の違いを具体的に示しながらも、そこからさらに抽象化した「モデル」を作って思考法を類型化して、他の領域や文脈に適用したり応用したりできるようにするのが書きたいです!
細居さん:
それは研究に携わる学生として僕も是非読んでみたいです!

渡邉先生、本当にありがとうございました!
——渡邉先生にお話を伺ってみて
【行動が人を作る】という言葉もありますが、僕が、渡邉先生の研究を一言で表すとすると【表現が思考を作る】という事になると思います。国ごとに教育される【表現の型】の違いが、異なる論理的思考を育むという研究テーマは斬新でとても面白かったです。僕自身も、自分の【表現の型】から自分の思考をみつめてみるきっかけになりました。
さて、前回の記事でも少し触れましたが、実は僕と渡邉先生は、4年以上前の基礎セミナー以来の不思議なご縁なのです。今回お話を聞いていく中でも、人生において人との縁を非常に大切にされているのが伝わってきて、それが渡邉先生のスケールの大きい研究人生に繋がっているのだと感じました。僕も、今後新しいことに挑戦していく中で、今ある縁をこれまで以上に大切にしていきたいと改めて思いました!
(インタビュアー・細居さんより)
——おわりに
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
「紹介していいかも!特別号・TOIC NAGOYA先生紹介リレー」第3回はいかがでしたでしょうか。
誠に勝手ながら、運営上の都合により、先生紹介リレーは今回をもちまして、暫く休載させていただくことになりました。
これまで、インタビューを受けてくださった3人の先生方をはじめ、いろいろな方にご協力いただいて非常に楽しい企画を行うことができました。本当にありがとうございました。また連載を再開できる日を楽しみにお待ちください!
今後ともTOIC NAGOYAをよろしくお願いします!
